ナイト・エスケープ 2


「子供の様子はどうだ?」
「いえ特に、何もありません」
「そうか」
閉ざされた扉の前に二人の男。一人は青年、一人は中年。
若者が問い、年長が答えた。
「おとぎ話のように女の子を助けに来るような子供は初めてみたな」
「世の中には面白いこともあるものです」
男たちは互いに小さく笑う。
「気をつけて見張れよ」
別れの挨拶を交わすと
一人は立ち去り、一人は鍵を掛けた扉を見守る。
静かな時が再び訪れる。
なかの子供たちは眠ってしまったのか、物音一つ聞こえない。
頑丈な扉は部屋の中の物音を全く通さず、ちょっとやそっとの音なら全く聞こえない。
中はさぞかし、静かだろう。
もう夜も遅い。
今、自分の家に眠っているだろう二人の我が子と、妻。
しばらく会えてはいないが自分がこうして働くことで家族の明日が築かれていくのだ。
家族の一員として、生きていくにはこれぐらいしかしてやれない。
だめな親だ。

・・・・・・いやッ
うん?
・・・・・・あッ
・・・・・・まだはやいよっ、あ
???
なかから少女の嬌声が聞こえる。
・・・・・・い、いぁ、いやぁ!
静かにしろ、外に気づかれるだろ?
・・・・・・あ、まだ、あ、いやッ!
どう見ても中の様子がおかしい。
なんだか判らないが、中で尋常ならざることがおきていることは判る。
・・・・・・あ、あ、だめぇ!そんなのは、あっ、まだはや・・・・・・
手に持っているマスターキーを鍵穴にさしこみ、回す。
扉を開け中に入る。
そこでは
幼い二人がなにかを物陰でしている光景が目に飛び込んだ。
「おい、お前たち、いったいなにを」
次の瞬間、物が落ちる音が鳴り響き、強制的に視界が天井へと釘付けになる。
そして、体が床から持ち上がり、首には二筋のワイヤー。
床の隙間に隠してあったワイヤーは確実に男の首に食い込み死地へと追いやっていた。
「あ、がッ」
足を振り乱しつつもつま先は届かず、地上から2メートルほど浮かび上がった体は宙を舞う。
「く、ぁ」
その男が死への抵抗を諦めるまでには、
幼い二人は扉を開け放ち、逃げはじめていた。
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