サキヨミ 6


 そして今回の任務は終わった。残りの任務はT.P.C.S.を渡すだけ。
長くつらい任務ではなかったが教官側としての任務はなかなか楽しいものだった。これまでにない恥ずかしい思いもしたが新鮮だった。
だが
ミサコが情報を流さないように常に監視しなければいけないと思えば今後が憂鬱だ。

はぁ......

今回の日誌はここまで。以下余白。

「さてと、対象は何をしている?」
 画面から目を上げT.P.C.S.の電源を切る。即座に画面が宙から消失し、金属板になる。
 即座に電源が切れるのは良いが、少し触れただけですぐ電気が切れるのは考え物だ。この機能は無駄だと思う。
「対象は依然、自室にいます。特に動きはありません。お聞きしたいのですがいつ送るんですか」

「こいつを送るのはもう少し時間がたってからにしようと思う。といっても、私たちにとっては数秒だが」
そこでほんの数秒。
「数秒経ったことだし送るとするか……」
 高校生姿のまま近くの郵便局へ赴く。金属板を持ちながら。
この新品がうらやましい。
「さてと」
 そして着いたのは建物の裏。裏口の扉の前。自分の金属板に手をかざし呟き宣言する。
「これより略式干渉を行う。τ軸変移停止。発効は即時」
 その言葉を言い終わった瞬間、甲高い音が鳴る。そして全ての風景が動きを止める。
「これでよし。で箱はどこにあるんだ?」
「どっかそこらへんにあるんじゃないですか。よく分かりません」
「勝手にあさっていいのか? こうやってこの時代でいう不法侵入をしているわけだが」
「いいと思いますよ」
 そういう会話をしながら、ミサコはどう見ても違うところをあさっている。行動で示しているわけかこれは。
「ダンボール見つかりましたよ。これでしょ」
 差し出された箱は側面に大きな果物、字が書かれている。”安川ミカン”……? 
探しているのは同じ箱でも郵便局の配達サービスの箱。この箱だったら、景品に当たったようにしか見えない。
 こいつはふざけているのか。
「これはどう見ても違うだろ。郵便局員の振りしなきゃいけないんだから」
「じゃこれですか」
そして差し出された箱は(ry
 で、金属板を箱に入れそこら辺のコンビニからかっぱらったクラフトテープ俗にいうガムテープで封をする。
 駐車場へと移動しながら、金属板に表示される時を見る。たったこれだけのことの為に
「すぐ食べれるインスタント食品がほかの事をして放置しているうちに何十分も過ぎ少々味に支障が出始めた」ぐらい過ぎている。
意味分からん例えだがこれは本当に時間感覚がおかしいだろう。
「何でこんなに時間がかかっているんだ? そんなに遊びたいのか?」
「なんなら、地方に飛ばしてもらって未来永劫遊べるようにしておくぞ?」

「いえ、遠慮しておきます」
どうみても本心は”遊びまくりたいです”というような表情が顔に出ている。こいつは本当に協力する気があるのか。
「こっちへ来い。さっさとこの車両を制御下に置く」
「は〜い」
なんどもいうが本当に(ry
ミサコは金属板を操作し、私は車に入る。そして自分の金属板に手をかざし、言葉を言う。
「略式干渉終了」
甲高い音が鳴り響く。
音が鳴り止む前に車の鍵をいれるところに金属板に付属金属片ストラップを差し込む。
ストラップをまわす。
「それでは出発するか。きちんと服装を変えておけよ」
「了解です」
――――――――――――――――――――――――
「はぁ......」
 誰もいない家の中で息をつく。
 どうしてこんなに鬱なんだろう。
 何もすることが無い。ふと窓辺を見てみるとそこにはいつもと変わらない風景が見える。
 なにひとつ、私の世界は何一つ変わっていないように見えた。
 誰もいない家の中で不安を紛らわすようにPCに向かう。今の自分にはそれ以外することができない。
 先ほどの出来事は夢だったのだろうか?眠りから覚め鈍い痛みがある頭でそれを確かめるためPCの電源をつける。
 
 PCの起動がつつがなく終了し、スクリーンが表示される。
 何の異変もない。
 念のため先ほど役に立たなかったと思われるアンチウィルスソフトのウィルス検知を使ってみる。
検索件数0件。
やっぱり何もない。
 これでも不安。頭が痛い。もしかして実は本当に起きたことなのではという考えが頭から離れない。
アンチウィルスソフトのアップデートをしてみる。
―――お使いのソフトは最新版です
これで安心かな?
 なんとしてもあれは夢だと考えなければ。あんな超常現象的なことを信じるわけにはいかない。
 どこからが夢かというのがいささか問題になるけど。
 どうせ寝坊して午後になってしまったんだ。今日あんなに遅く寝たんだから。
そうに違いない。
なんと苦しい。
 まぁいい。とりあえず、ブラウザを開きネットをぶらぶらしてしばらく暇をつぶそうとしたが頭が痛い。PCをやってはいられない。
 頭痛薬でも飲むか?下まで行くのもめんどくさいが。
「もうそろそろ、なんか食べよう」
 思ってみれば昼食を食べていない。非常食を探すべく、PCから目を上げる。机の引き出しを開けるがiメイトは中に入っていない。
 その拍子に机の上にあるケータイが滑り落ちる。床に落ちる音より先に玄関先のチャイムが鳴る。
その現象ひとつひとつが連続して起きるなか、体は硬直していた。
誰……?
「こんな時間に帰ってくるわけないのに」
 部屋の窓からのぞいてみる。家の前の道路には車両が一台。車体の大きさからしておそらく運送業。いやあれは郵便局か?
とりあえず部屋のドアを開け、下への階段を降りる。
またチャイムが鳴る。
寝ぼけた足取りで階段をさらにはやく降りる。
「はい、今出ます」
 廊下にある鏡で容姿を確認した後、玄関のドアを開ける。鍵はかかっていなかった。
あまりに無用心だ。泥棒に入られても文句は言えない。
そしてドアを開けた目線の先には中年の郵便配達員と思わしき人物。
「柳さんの御宅ですね?」
「はいそうですが?」
「お届け物です。ここにサインをお願いします」
 ペンと小包を差し出す。サインする場所を指で指しながら署名を促してくる。
決して綺麗とは言えない字で苗字を記す。
「確かにこれで」
 一通りの定型的な行動をした後、相手は一礼し車の方へ戻っていった。
相手が行くのを見届けると玄関の扉を閉め鍵をかけた。
小包は私宛。結構軽い。何か懸賞に応募しただろうか?それがあたったのか?
 もしかして新手の詐欺かとも思う。だが明らかにそんなにいっぱい中身は入っていなさそうだけど。
 詐欺の基準のつけ方が大いに間違っているような気がするが、まぁいっか。
そんなことを思いながら階段を上り途中で一階に引き返す。 そして台所の戸棚らへんをあさり小包と共に2階へ持って行く。
……中に何が?
そう思った瞬間、頭が鈍くうずく。
 部屋のドアを開け、寝台に腰掛ける。ドアを閉める。そのまま寝転がりたい気持ちが小包の中を見たい気持ちに負ける。
「?」
小包は普通にクラフトテープで封がしてあるだけ。
 机からカッターを取り出し、封を開ける。中身にいったい何が入っているのか楽しみにしながら。
封を開けふたを開ける。最初に目に入ってきたのは鉄板。
 鉄板? 疑問符がついていしまうほど他には何も入っていない。緩衝材すら入っていない。
「雑だな。これ」
 本当に送り主は誰だろう。配達伝票を見てみても先程は気づかなかったが、送り主の欄は空欄だ。やはり新手の詐欺か。
 ズキッ。頭にまた鈍い痛みがする。
 箱の中身に手を伸ばし鉄板を手に取る。でこういう時たいがい何かが起きる。そしてそれはまさに起こった。
 Time and Place variable Changing Systemへようこそ。
ユーザー名:Y.ヒロ。本システムはあなたにすばらしいサービスと任務遂行のための快適なパフォーマンスを提供します――――
 これがまるで映画のようにホログラフィ?多分こういうときに使ってこんな感じに見えるとき使う言葉だろう。
と思っているうちに床に落とす。怖い。
怖い怖い怖い怖い。
え?なにこれ?いったい何なの?これ?
 疑問詞が頭の中をめぐる中、その頭の中で声が聞こえる。それを拾えと。意思とは反し、手を伸ばす。
その声は私の心の声なのかそれとも。
 自分にお前は二重人格かと突っ込みを入れたくなる。
 そして再び機器に手をつける。そこからはホログラフィという名のスクリーンに釘付けだった。
 オーバーテクノロジー。それがこの鉄板にふさわしい名。いや、鉄板ではないか。
――――初回の任務は次のとおりです。日時4月29日午後2時54分。人格浄化。
 その任務とやらには隣の隣のクラスの男子の画像が写っている。
やはり夢ではなかったか。
先程のPCスクリーンで頭脳中に入り込んできたあの知識群は私を失神させずに現実につなぎとめているようだった。
死神。まさか本当に……。しかも現実にこんなことになるなんて。
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